成年後見制度には、法定後見と任意後見があり、いずれも認知症や精神障害などにより、自分での財産の管理をすることが困難な人のために、代理人を選任し、本人の財産の保護をはかるための制度です。
法定後見は、判断能力が衰えた後で利用します。なるべく本人に残された能力を生かしつつ、足りない部分を第三者が補うという観点から、本人の能力に応じて、補助・保佐・後見の3類型のうち、どの類型を利用するかを検討します。
任意後見は、将来的に判断能力が衰えた時に備えて、あらかじめ、後見人となるべき者(任意後見受任者)を契約で定めておきます。その後、実際に本人の判断能力が低下し家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で、契約の効力が生じます。
なお、親権者のいない未成年者については、本人の能力に関係なく、代理人を付す必要があり、これを未成年後見といいます。
成年後見人・保佐人・補助人については、本人・配偶者・4親等内の親族などの申立てをうけて家庭裁判所が選任します。未成年後見人については、原則は親権者が遺言で指定しますが、遺言による指定がない場合は、本人・親族・利害関係人の申立てをうけて家庭裁判所が選任します。
例えば認知症の父親Aの後見開始申し立てを、長男Bが申立てした場合、Aのための手続きなのでAの資産から費用を捻出するのが合理的のように思われますが、非訟事件手続法により原則として申立人Bが負担することになっています。
成年後見開始申し立てから、後見開始の審判がなされるまでの期間は、おおむね3ヶ月程度です。
法定後見の場合、後見人等の報酬は、後見人等の報酬付与申立てに対して、家庭裁判所が後見人の業務量や難易度などを考慮して定めますので、一概にいえません。任意後見の場合は、任意後見人の報酬は任意後見契約で定めた額の報酬と、家庭裁判所が定める任意後見監督人の報酬がかかります。
施設入所費用を捻出するために必要であるなどの理由で被後見人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
例えば被後見人Bの父親Aが亡くなった場合には、後見人Cが本人のかわりにAの遺産に関する遺産分割協議に参加することになりますが、CはここでBの相続分が法定相続分を下回る内容の協議をすることはできません。また、CがAの相続人でもある場合は、後見人Cと被後見人Bの利益が相反しますので、CはAのために特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てしなければならず、選任された特別代理人DがBのために協議に参加します。
後見人を辞任するには、病気や遠隔地への転居など正当な事由が必要であり、家庭裁判所の許可が必要です。簡単には辞めることはできないので、後見人に就任するまえに職責を全うすることができるのか熟慮すべきです。